シンデレラ the ミュージカル

もう1週間以上前になりますが8/9の土曜日、夜公演(16:00開演)に行ってきました。座席は17列の右サイド。オーケストラピットがある分「リボンの騎士」よりも舞台が遠かったです。
以下簡単に感想など。(ネタバレ注意)

リボンと比べて…

まず、「リボンの騎士」と比べてはいけないと思いつつもやはり色々比べてしまう。「リボンの騎士」が原作をベースにしつつもモーニング娘。に合わせて書き下ろされたオリジナルのスートーリーや歌に彩られていたのに対して、今回はアメリカで作られた古典的な名作を、ほぼそのまま日本語に置き換えた様な曲や構成なのだと思う。(←あくまで原作は見たこと無いので推測の域を出ませんが。)だから、と言ってはあまりに短絡的かもしれませんが、あまりモーニング娘。らしさを発揮できる様なタイプの脚本ではなかった様に見受けられました。
前回は脚本家の人が娘。に合わせて役を作ってくれた感があったのに対し、今回は出来上がっている役の方に娘。達が自分を合わせなくてはならなかった様に感じられました。しかも、その役がイマイチ個性に欠けるといった感じ。(極論すると、ぶっちゃけ、娘。がやらなくても全部宝塚メンでやれば良くね?といった感じさえしてしまう。)
それから、ストーリーが非常に単調なのです。基本、おとぎ話のシンデレラそのままで何のひねりも無く、一本調子で物語が展開していってしまう。ドラマチックな展開や、ドキドキハラハラとか登場人物たちの心の葛藤とか、そういったモノがほとんど無いままにラストまで流れていってしまう訳です。ストーリーを楽しむというよりも、娘。や宝塚メンバー達の歌やダンスを楽しむ事に主軸を置いた様なスタイルの舞台であったと思います。
舞台の基本と言えば、ベタですが「笑いと涙」だと思うんですが、今回は笑いの要素もちょっと薄かったし、泣きの要素もほとんど無かったかなぁ…という印象。(えりりん&れいなの姉妹&継母なんかのやり取りなんかはまぁ微笑ましかったけれど。)
とまあ、つらつらと文句を並べ立てたところで仕方の無いことなので、気になったメンバー毎の寸評へ。

高橋愛

相変わらず歌が上手い。愛ちゃんは本当ミュージカル向きだよね。宝塚のお姉さま達の歌に唯一対抗できるレベルだったと思います。でも今回の役はただの「夢見る少女」って感じで今一つ観客が感情移入できる様なタイプの役ではなかった点で印象が弱かったです。

新垣里沙

なんだかんだ言っても、今回一番大変だっただろうなと容易に想像が付くのがガキさん。背も高くないのに頑張って厚底の王子様ブーツを履いて、低めの声で頑張って男っぽい歩き方や身のこなしで…でもやっぱりガキさんガキさんなんだよなあ。男と見るにはやっぱり線が細すぎる。で、出来上がったのがひどく中性的な感じのする王子様。洗練されてはいるんだけれども、頼りがいは無さそうな「オトコおんな」って感じ。歌声もちょっとか細いかな。いや自分、普段のガキさんの歌声って優しいし癒されるしすごく好きなんだけれども、王子様の声としては少し迫力に欠けるというか声量不足。
でもこの中性的な王子様、ラストでシンデレラを抱き寄せる段になると何だか知らんが見ていてスゲー萌えるのよ! シンデレラと王子様という、男と女が抱き合ってるという見かけの上に、同時に女同士が抱き合っている様にも見えるという百合的情景に突如そこはかとない萌えを感じ、さらに「ああっ、愛ちゃんとガキさんが5期メン同士で愛し合ってるううう」的な自分でも良く分からない萌えポインツが重なり合って何とも言えない不思議な感情が自分の中に沸きあがってきたのです。
これを安易に「萌え」と表現して良いのか自分でも良く分からないのですが、何かが小さく「燃え」るようでもあり、「もえ」とひらがなで表現してもいいかもしれない様な、とにかく不思議な感情を抱いたのです。
私は無論、宝塚の事はよく分からないのだけれど、この男役と女役が醸し出す百合的情景というのは、きっと宝塚歌劇を観るファンにとっては重要な意味を持つのではないかという気がしました。それを「萌え」と表現するかどうかはさておき、そういった事も一つのファンへの訴求ポイントなのではないでしょうか。
という訳で少し脱線しましたが、ガキさんはかなり頑張って無理をして王子様役を演じていたのだけれど、それは大成功では無かったにせよ、不思議な味を残した王子様であったと言えるでしょう。

道重さゆみ

さゆみんは事前にあれだけ「セリフが無い」とか「竜宮城のワカメみたいな役」だとか言ってネタにしていた割には、いい味を出していたと思う。冒頭のフライングシーンは期待した程では無かったにせよ、妖精という役はさゆみんにピッタリの役でした。具体的に何が良いかと言うと、例えば妖精が走り回る時に、その手足の動きだったりがいかにも妖精チックでカワイイのです。同じ役で同じ動きをしているはずのみっつぃと比べても、明らかに動きに可愛らしいアクセントが入っている。さすがはさゆみん、日々「よし今日もカワイイ!」と鏡の精に向かって呪文を唱え続けて来ただけのことはある。という事で、この役はさゆみんだからこそ与えられた役だと見て良い訳で、ワカメならではの味が染み出ていたのでした。

その他の人々

その他のメンバーについては残念ながら自分にとってはあまり見どころが無かったです。
えりりん&れいなの姉妹は、もっとすご〜く意地悪なのを期待して行ったから何かほのぼの姉妹で肩透かしを食らった感じだったし(まああれは継母を含めて楽しいやり取りだからそれで良いんですけど)大して印象には残らなかったかなという感じ。
小春の伝令官もあのキャストの中では適役かなとは思ったけれど、さしたる見せ場も無くて、もったいない感じでした。
みっつぃは、さゆとの妖精コンビはなかなか良かったと思います。もうひとつの子供の役はちょっと微妙だったかな。
ジュンジュン&リンリンはもっとどうにかしてあげたかった感じです。見せ場なさ過ぎ。

タカラヅカ×モーニング娘。

あと、宝塚のお姉さま方の歌とダンスはやはり良いものでした。美しくカッコイイ。とは言っても自分はそれを見るためにわざわざ劇場に足を運ぼうとまでは思わないので、ヅカヲタになる素養は無いようです。
「美しくカッコイイ」というのは娘。の持つアピールポイントのひとつでもある訳で、自分が娘。ヲタではあってもヅカヲタにはならないという、その差は何なのか?と考えるとやはり、「美しくカッコイイ」だけではダメで「カワイイらしさ」という要素がないとヲタにはなれないんだろうなと思いました。
今回は第3部のフィナーレの部分が「リボンの騎士」より充実してるんですけど、本音を言うとフィナーレを縮小してでも本編を充実させて欲しかったです。
とまあ何だか文句が多くなってしまいましたが、娘。達も宝塚のお姉さま方も頑張っている舞台であることは間違いないなく、今後千秋楽に向けてたぶん演技も良くなっていくのだろうなと思いました。